らぴゅ海賊日誌
らぴゅの海賊日誌
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``削ぎ船`` -2
夜は更けていた。闇の帳が辺りを包み、アンボイナを暗い黒へと埋めている。
昼間は賑わいをみせるこの街も、夜はひっそりと静まり返る。明かりといえば、船乗り達が眠る港の船から漏れる淡いランタンくらいか。びっしりと並ぶ船が灯す光は、浜辺から眺めると、ある種の荘厳ささえ感じる。 港以外でもう一ヶ所、明かりの灯っている場所があった。 昼間も賑わう酒場は、夜も遅くまで飲んだくれが居座っている。夢に敗れ、志半ばで未来を無くした者。故郷に帰ることも叶わず、アンボイナから出ることも出来ない。絶望を酒で抑え込み、それでも耐え切れなくなると、海へと還る。 マスターは、カウンターで酒を浴びている中年の男からグラスをもぎ取った。 『潰れてるところ悪いですが、起きてください。』 カウンタードアからホールへ出ると、テーブルを周り、酔いつぶれた客を起こしていく。なかなか動かない客には、テキーラの原酒を気付け代わりに無理やり口に含ませた。それでも抵抗を続ける者は無理やり外に放った。 『ふぅー・・・さて、と。』 マスターは店内を見渡し、客がもう残っていないかを確認した。一人を除いて。 小さなグラスを手に取り、蒸留水用タルの栓を捻る。テキーラを数滴垂らし、スティックバーで数度かき混ぜた。 店隅のテーブルには、昼間の女が変わらず突っ伏していた。テーブルの手前で立ち止まり、どうしたものかと考える。取りあえずグラスを置く。女の、足元の甲冑に目を落とした。 『お客さん、もう店は閉まりましたよ。起きてください』 そう言いながら女の肩を揺すった。そして気づいた。 『え・・・』 熱かった。 マスターは女の髪を掻き上げ、額に手を当てた。―――肩よりもずっと熱い。慌てて女を椅子から下ろし、床に寝かせる。持ち上げられるときも、女の体に力はなく、死んだ人間のようにぐにゃりとしていた。 小走りでカウンターへ戻り、布切れに水を含ませる。一度軽く絞り、小さな桶にも水を満たす。上着のベストを脱ぎ、半分に折りたたんで女の頭下に敷いた。ブーツを脱がし、熱を発散させやすくする。 『・・・』 応急処置を終え、中腰のまま女を観察する。昼間からずっと気を失っていたんだろうか。昼間の船乗りの男の話によると、削ぎ船の生き残りらしい。 削ぎ船がアンボイナに難破したのは2日前。このとき、街は騒然となった。元は、恐らくガレオン船だったのだろう。残った船体と、ガレー特有の櫂がないから、というだけの判断だったが。普段よく見るガレオン船は1~2層艦で、2層の砲列甲板を持ち、船縁が反り返ったように大きくカーブしている。船尾には背の高い船尾楼が設置され、四角く切り取った形状が多い。マストは3~5本で、横帆と縦帆が組み合わされている。 ところが、削ぎ船は1層より上が無かった。浮いているのが不思議なくらいの状態としか、いいようがなかった。砲弾点火用の火薬庫が大爆発を起こしても、こうはならないだろう。その時は船は間違いなく沈没するだろうが、削ぎ船は1層以下はほぼ無傷で残っている。まるで、船の真ん中から上だけが``削ぎ取られた``ように。 剝き出しににった砲列甲板には、数人分の爆死体が散乱していたが、原形を留めていなかったため、正確な人数は分からないらしい。 マスターは削ぎ船を脳裏に思い浮かべ、ゾッとした。好奇心に負けて野次馬に混じって観に行ったが、あれは見るべきではなかった。 『考え事をしている場合じゃないな。』 マスターは立ち上がり、ランタンを手に取った。夜は遅いが、医者に見せなければいけない。この辺りで熱にうなされている場合、放っておくとまず助からないケースが多い。一緒に連れていくことが出来ないため、カウンター裏の小部屋にあるベッドで寝かせておくことにした。 酒場ホールに戻ってきたとき、女の甲冑が目に入った。女のものであることは間違いないだろう、とマスターは甲冑を拾おうとした。 『・・・』 甲冑を手に取ろうとして、マスターは船乗りの男の言葉を思い出した。‘‘胸の部分に紋章がある‘‘ マスターの手が止まった。甲冑の胸の部分は床に面していた。 『なんで分かったんだ・・?甲冑の表は見えなかったはず』 ‘‘船体を見たら分かるぜ。同じ紋章だからな‘‘・・・船体?・・残っているのは1層部分だけだった。紋章は普通、マスト頂部の旗や帆では・・? 『首突っ込むなって言ったのによぉ・・。』 背後からの突然の声。振り返ったマスターの目に入ったのは、昼間の船乗りの男だった。 続くkamo PR
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おい、続きがきになるじゃねえか・・・
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いよいよ小説始まったんすね~。待ってましたあ! |
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採用決定!ド―――m9(゜д゜)‐―――ン! |
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楽しんでいってほしいぱお♪ |
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あ~(≧∇≦)
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行き当たりばったりがどこまで続くかぱおねぇ・・w |
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